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野球中継を見ていると、ピッチャーが投げていないのに審判が手を挙げ、ランナーが一つ進む場面があります。これが「ボーク」です。野球漫画でも、ボークが試合の流れを変える場面はおなじみですよね。でも、どんな動きがボークになるのかは、意外とわかりにくいものです。
この記事では、MLB(メジャーリーグ)が公開している「Official Baseball Rules(公式野球規則)」2026年版の規則6.02(a)と用語の定義をもとに、ボークの意味と、反則になる主な動き、ペナルティを5つのポイントにまとめます。規則の日本語は、この記事での訳です。後半の、試合観戦で使える見方は、この記事の提案です。
※日本のプロ野球やアマチュア野球では、日本の「公認野球規則」や各連盟の規定が使われます。内容はOBRをもとにしていますが、細かい運用が異なる場合があるため、所属する連盟や大会の規定もあわせて確認してください。
ボークとは何か
用語の定義
OBRの用語の定義では、ボーク(BALK)は「走者が塁にいるときの投手の反則行為で、すべての走者に1個の進塁が与えられるもの」と説明されています。ポイントは、「走者がいるとき」の反則だということです。
ボークの目的
規則6.02(a)の注釈では、審判はボークの規則の目的が「投手が故意に走者をだますのを防ぐこと」であることを心に留めるべきだ、と書かれています。審判が迷った場合は、投手の「意図」で判断するとされています。
走者がいないときは「ボール」
規則6.02(b)では、塁に走者がいないときに投手が反則投球をした場合は、打者が安打や失策、四球、死球などで一塁に達した場合を除き、「ボール」が宣告される、と定められています。
ボークを知る5つのポイント
1. 走者がいるときの投手の反則
規則6.02(a)は「走者がいる場合、次のときはボークになる」として、13の項目を挙げています。走者がいなければ、同じ動きでもボークにはなりません。まずは「走者がいるかどうか」を確認するのが、ボークを理解する第一歩です。
2. 投球動作を始めたら投げる
6.02(a)(1)では、投手板に触れている投手が、投球に自然につながる動作を始めたのに投球しなかった場合はボークとされています。注釈では、自由な足(軸足でないほうの足)が投手板の後ろの縁を越えて振られた場合は、けん制で二塁に投げる場合を除き、打者に投げなければならない、と書かれています。
3. 塁に投げるときは踏み出す
6.02(a)(3)では、投手板に触れている投手が、塁に投げる前にその塁の方向へ直接踏み出さなかった場合はボークとされています。6.02(a)(2)では、一塁や三塁へ投げるふりをして投げなかった場合もボークです。注釈では、二塁へ投げるふりをするのは合法とされています。
4. セットポジションでは止まる
6.02(a)(13)では、セットポジションから、静止せずに投球した場合はボークとされています。走者がいるときにピッチャーが一度止まってから投げるのは、このためです。
5. ペナルティは走者が1つ進む
規則6.02(a)のペナルティでは、ボールデッドとなり、各走者はアウトにされることなく1個ずつ進塁する、とされています。ただし、打者が安打や失策、四球、死球などで一塁に達し、ほかの走者も全員が少なくとも1個進塁した場合は、ボークに関係なくプレーが続きます。
規則6.02(a)の13項目
規則6.02(a)が挙げる13の項目を、短くまとめた表です(この記事での要約です)。
| 項目 | ボークになる動き(要約) |
|---|---|
| (1) | 投手板に触れて投球動作を始めたのに、投げない |
| (2) | 投手板に触れて一塁・三塁へ投げるふりをして、投げない |
| (3) | 投手板に触れて、塁の方向へ直接踏み出さずに塁へ投げる |
| (4) | 投手板に触れて、プレーの目的なしに走者のいない塁へ投げる・投げるふりをする |
| (5) | 反則投球をする(クイックピッチを含む) |
| (6) | 打者に正対しないで投球する |
| (7) | 投手板に触れずに、投球に自然につながる動作をする |
| (8) | 不必要に試合を遅らせる |
| (9) | ボールを持たずに投手板に立つ・またぐ、または投手板を離れて投球のふりをする |
| (10) | 正規の投球姿勢をとったあと、投球や送球以外でボールから片手を離す |
| (11) | 投手板に触れていて、ボールを手やグラブから落とす(故意でも偶然でも) |
| (12) | 故意四球のとき、捕手が捕手席にいないのに投球する |
| (13) | セットポジションから静止せずに投球する |
5つのポイントの早見表
| ポイント | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 走者がいるとき | 走者がいるときの投手の反則 | 用語の定義、6.02(a) |
| 2 動作を始めたら投げる | 投球動作を始めて投げないとボーク | 6.02(a)(1) |
| 3 塁へ踏み出す | 踏み出さずに投げる・投げるふりはボーク | 6.02(a)(2)(3) |
| 4 セットで止まる | 静止せずに投げるとボーク | 6.02(a)(13) |
| 5 ペナルティ | ボールデッド、走者が1個ずつ進塁 | 6.02(a) PENALTY |
注釈でわかる細かい判断
クイックピッチは反則投球
6.02(a)(5)の注釈では、クイックピッチは反則投球とされています。打者が打席で十分に構える前に投げた投球を、審判がクイックピッチと判断します。走者がいればボーク、走者がいなければボールになり、注釈では危険なので認めるべきではない、と書かれています。
一塁走者がいるときの二塁への送球
6.02(a)の注釈(B)では、一塁に走者がいるとき、投手が一塁の方向にためらわずに完全に回転して二塁に投げるのは、走者のいない塁への送球とはみなされない、とされています。
ボールを持たずに投手板をまたぐ
注釈(A)では、ボールを持たずに投手板をまたぐことは、だます意図があるとみなしてボークと判定する、とされています。
ボークのあと暴投になったら
承認された裁定(APPROVED RULING)では、投手がボークをして塁や本塁に暴投した場合、走者は自分の責任で、与えられた塁より先まで進むことができる、とされています。
ボールがすべって落ちたとき
6.02(b)の注釈では、投手の手からすべったボールがファウルラインを越えればボール、そうでなければノーピッチとされ、塁に走者がいればボークになる、と書かれています。
ボークとは別の「投手の禁止事項」
規則6.02(c)には、ボークとは別に、投手がしてはいけないこと(Pitching Prohibitions)がまとめられています。ボークと混同しやすいので、主な内容を整理しておきます(この記事での要約です)。
| 項目 | 禁止されていること(要約) |
|---|---|
| (c)(1) | 投手板の周り18フィートの円の中で口や唇に触れたあとボールに触れる、投手板に触れたまま口や唇に触れる |
| (c)(2) | ボール、手、グラブにつばをつける |
| (c)(3) | ボールをグラブや体、服にこすりつける |
| (c)(4) | ボールに異物をつける |
| (c)(5) | ボールに傷をつける |
| (c)(6) | (2)〜(5)のように加工したボールを投げる |
| (c)(7) | 異物を身につける、持つ |
| (c)(8) | 打者が構えているのに、走者をアウトにする目的以外で捕手以外に投げて、故意に試合を遅らせる |
| (c)(9) | 故意に打者をねらって投げる |
素手でボールをこするのは認められる
6.02(c)(6)では、投手は素手の両手の間でボールをこすることは認められる、と書かれています。
手や指に何かを貼るのも不可
6.02(c)(7)の注釈では、投手は手や指、手首に、ばんそうこうやテープ、ブレスレットなどをつけてはいけない、とされています。
ペナルティはボークと異なる
6.02(c)(2)〜(7)に違反した場合のペナルティは、6.02(d)で、投手はただちに退場となり、自動的に出場停止になる、と定められています。走者が進むボークとは、扱いがまったく違います。
試合観戦でボークを見つけるコツ
ここからは、規則の内容をもとにした、この記事の提案です。
セットポジションの静止を見る
走者がいるときは、ピッチャーがセットポジションでしっかり止まっているかに注目してみましょう。6.02(a)(13)を知っていると、止まる時間の長さや、けん制とのかけ引きが見えてきます。
けん制の足の動きを見る
けん制球のときは、ピッチャーが塁の方向に足を踏み出しているかを見てみましょう。6.02(a)(3)の決まりがわかると、けん制のうまさにも気づけるようになります。左投手と右投手で、一塁へのけん制の見え方が違う点にも注目してみてください。
審判のジェスチャーを確かめる
ボークのときは、審判がプレーを止めて宣告します。どの項目が理由だったのかは、中継の解説や公式の記録で確かめるとよいでしょう。
規則書を手元に置く
テレビで見ていて気になった場面は、OBRや日本の公認野球規則で確かめてみましょう。規則の言葉で理解すると、野球漫画のボークの場面もより楽しめます。
ボークのよくある質問
走者がいないときもボークになる?
OBRの定義では、ボークは走者が塁にいるときの反則です。走者がいないときの反則投球は、6.02(b)により原則として「ボール」になります。
ボークになると打者はどうなる?
ペナルティでは、ボールデッドとなり各走者が1個ずつ進塁します。ただし、打者が安打などで一塁に達し、ほかの走者も全員1個以上進んだ場合は、ボークに関係なくプレーが続きます。
二塁へ投げるふりはボーク?
6.02(a)(3)の注釈では、二塁へ投げるふりをするのは合法とされています。
試合を遅らせるとボークになる?
6.02(a)(8)では、投手が不必要に試合を遅らせた場合もボークとされています。注釈では、6.02(c)(8)の警告が出された場合には(a)(8)は適用しない、とも書かれています。
ボールを落としてもボーク?
6.02(a)(11)では、投手板に触れている投手が、故意でも偶然でも、ボールを手やグラブから落とした場合はボークとされています。
ボークのルールを知って野球をもっと楽しもう
ボークは、走者がいるときの投手の反則で、すべての走者に1個の進塁が与えられます。投球動作を始めたら投げる、塁へ投げるときは踏み出す、セットポジションでは止まる、といった決まりを知っておくと、ピッチャーと走者のかけ引きがぐっと面白くなります。
細かい運用は、日本の公認野球規則や連盟の規定も確かめながら、観戦やプレーに役立ててください。